Cambridge University Press と出版契約を結びました。これまでの研究で私は、「日本人 = 集団主義」論が事実に反することを明らかにし、複数の論文を日本語と英語で発表してきました。『「集団主義」という錯覚』(新曜社)、『日本人論の危険なあやまち』(ディスカバー・トゥエンティワン)という2冊の本も出版してきました。
個人主義に高い価値を置き、集団主義を嫌悪するアメリカ人に「日本人は集団主義的だ」と思われていることは、日本にとっては、非常に恐ろしいことです。1980年代から90年代にかけての日米貿易摩擦では、「日本特殊論」「日本異質論」と呼ばれた「集団主義」批判がアメリカで猛威を振るい、日本経済は、甚大な被害を蒙りました。アメリカ人をはじめとして、世界中の人たちが「日本人 = 集団主義」論を信じているという危険な現状を改善するためには、この通説が事実ではないことを世界中のできるだけ多くの人びとに伝えなければなりません。そのためには、日本語の本を出版するだけでは不充分で、英語の本を出版する必要があります。
欧米の出版社は、出版企画の提案を受けると、詳しい趣意書(proposal)の提出を求め、それを複数の専門家に送り、彼らの意見にもとづいて審査をしますが、さいわい、趣意書が高い評価を受け、Cambridge University Press と出版契約を結ぶことができました。学界では高い権威をもっている出版社なので、ここから出版すれば、ある程度の影響力は期待することができます。
日本語で出版した前著2冊は、いずれも一般読者層に向けて書きましたが、今度の本は、読者として研究者と大学院生を想定しています。学問的な詳しい議論も収録する予定です。英語の本のマーケットは非常に大きいので、出版社は、そうした本でも採算が取れると判断したのでしょう。今後1年か2年は、この本の執筆に忙殺されることになりそうです。