新著『日本人論の危険なあやまち』を刊行(2019年10月)

『日本人論の危険なあやまち ― 文化ステレオタイプの誘惑と罠』(ディスカヴァー携書)が10月19日に刊行されました。

「日本人は集団主義、アメリカ人は個人主義」という日本人論の通説は誤りだ、ということを立証した本です。その点では、前著『「集団主義」という錯覚』(新曜社 2008年)と変わりないのですが、前著を刊行して以来、この問題については、私自身、理解が深まり、視野も広がりました。実証的な日米比較研究も次々に発表されてきました(これについては、英語の論文に詳しく記しました)。そうした新しい研究成果を取り入れ、構想を根本から練り直した上で執筆したのが、今回の新著です。

とはいっても、新書版なので、あまり専門的な議論は入っていません。また、「できれば、高校生にも読んでもらいたい」と思ったので、すらすら読み進められる文章になるよう、何十回となく推敲を重ねました。ルビも多めに振りました。

これまでの経験から考えて、「日本人は集団主義」という先入観が頭にこびりついている人に、その先入観を改めてもらうのは至難の技です。そこで、「まだ先入観に汚染されていない高校生に読んでもらえれば」という願望が生じたわけです。

以前、大学入試センター試験の試験監督をするために、都内のある高校に行ったときのことです。図書室が待合室になっていたのですが、書棚を見ていた同僚が、「高野の本があるぞ」と教えてくれました。『傾いた図形の謎』(東京大学出版会)でした。そんなことが記憶にあったので、「高校生にも読んでもらえるかもしれない」と思った次第です。

この本の執筆中は、幾つもの苦難が重なって、極度のストレスのもとで原稿を書き進めることになりました。「ストレスは脳を萎縮させる」という話に実感が湧いたほどでした。それでも、「何とか納得のできる水準に仕上げることができた」というのが本人の感懐です。